塩酸ジフェンヒドラミン(16-11-7)物理的および化学的特性

塩酸ジフェンヒドラミン構造
化学概要

塩酸ジフェンヒドラミン

第一次世代H1抗ヒスタミン薬であるジフェンヒドラミンの塩酸塩。原薬としておよび製剤開発・品質管理の分析用標準物質として一般的に供給される。

CAS番号 16-11-7
化学ファミリー エタノールアミン系抗ヒスタミン薬
形状(一般的) 白色結晶性粉末
一般的な薬局方グレード BP, EP, JP, USP
一般に医薬品研究開発、製剤開発、分析法バリデーションおよび安定性試験などで、定義されたグレードの原薬が必要な用途に用いられる。調達および品質保証チームは通常、BP/EP/JP/USP薬局方規格グレードを指定し、ルーチン分析技術により同一性と純度を確認する。保管および取り扱いは結晶性粉末として、湿度管理下で行う。

塩酸ジフェンヒドラミンは、ベンジヒドリルエーテル類に属する三級アミンエタノールアミン誘導体であるジフェンヒドラミンのモノ塩酸塩である。構造的には、ジメチルアミノエチル側鎖がエーテル結合を介してベンジヒドリル(ジフェニルメチル)部分に結合しており、二つの芳香環と一つの塩基性窒素原子を有する分子である。塩酸塩としては、酸性から生理学的pHにおいて主にプロトン化されたアンモニウム形態で存在し、遊離塩基に比べて水溶性が著しく向上している。低い計算上のトポロジカル極性表面積(TPSA = 12.5)と広範な芳香環表面積の存在により、遊離塩基は本質的な脂溶性を持ち、一方でイオン性塩形は膜透過性(遊離塩基)と高い水分散性(塩)を両立している。

電子的には、塩基性部位は容易にプロトン化される三級脂肪族アミンであり、エーテル酸素および三級アミンは二つの弱い水素結合受容部位を提供し、プロトン化コンテキスト(塩/溶媒和物)でのみ一つの水素結合供与部位が存在する。分子は化学的に芳香族エーテルおよび三級脂肪族アミン塩であり、強い酸化剤や還元環境に敏感で、長時間の光曝露で徐々に変色する可能性がある。薬理的には、古典的な第一世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬であり、中枢神経系透過(鎮静作用)と抗ムスカリン作用を示す。このクラスレベルの特性が臨床および製剤用途の大部分を牽引している。

この物質の一般的な市販グレードにはBP、EP、JP、USPがある。

基本的な物理化学的特性

密度および固体形態

塩酸ジフェンヒドラミンは、無臭で苦味のある痺れ感のある味の白色〜ほぼ白色の結晶性粉末として供給・使用される。5%水溶液はpH4〜6の範囲で、プロトン化された三級アンモニウム塩の存在を反映した酸性を示す。塩酸塩形態は水溶性が高く、水溶液は酸性である。

この特性について現在のデータに実験的に確立された値は存在しない。

融点

報告されている融点:\(331\)〜\(338\,^\circ\mathrm{F}\)(華氏)。

比較的高い融点の報告値(ここでは提供されたまま表記)は、結晶性のイオン性固体(塩)であり、非イオン性の遊離塩基に比べて格子安定性が大きいことと整合的である。この結晶パッキングは多くの固形剤型製剤の製剤安定性に寄与する。

溶解性および溶出挙動

  • 報告されている水溶解度(pH 7.4における平均値):\(>43.8\,\mu\mathrm{g}\,\mathrm{mL}^{-1}\)
  • 報告されている溶解度(\(70.7\,^\circ\mathrm{F}\)):\(\geq 100\,\mathrm{mg}\,\mathrm{mL}^{-1}\)

塩酸塩形態は中性の遊離塩基よりも著しく水分散性が高い。三級アミンのプロトン化は極性および溶解速度を増加させる。溶解性はpH依存性があり、遊離塩基は高pH条件で脱プロトン化されるため溶解度が低下するが、塩形は中性および酸性pHで高い溶解性を維持する。これらの特性により、塩酸塩は即放性経口製剤および経口液剤、ならびに水性外用/抗かゆみ製剤に適している。

化学的特性

酸塩基挙動および定性的pKa

この特性について現在のデータに実験的に確立された値は存在しない。

定性的には、塩基性官能基は三級脂肪族アミンで塩酸塩を形成する。水性条件下の中性および酸性pHでは、優勢種はプロトン化されたアンモニウム塩(水溶性)であり、遊離塩基は著しく低極性である。この生理学的pHでのプロトン化状態が、分子の薬物動態分布(水溶性と膜透過性のバランス)に寄与している。

反応性および安定性

塩酸ジフェンヒドラミンは酸性の水溶液を形成し、塩基を中和する。強い酸化剤や還元剤と反応する可能性があり、強い反応性条件下では副反応を促進または参与する場合がある。光曝露によりゆっくりと変色し、時間経過による光化学的または酸化的不安定性を示唆する。分解加熱時には窒素酸化物や塩化水素などの有害ガスを放出することがある。水溶液や漏洩物は不必要な曝露と分解を回避して取り扱うべきである。

分子パラメータ

分子量および分子式

  • 分子式:C17H22ClNO
  • 分子量:\(291.8\,\mathrm{g}\,\mathrm{mol}^{-1}\)
  • 正確質量/単一同位体質量:291.1389920

これらの値は1:1塩組成(ジフェンヒドラミン・HCl)に対応する。

LogPおよび構造的特徴

このデータコンテキストでは実験的LogP値は利用できない。

分配および透過性に関連する構造的特徴: - 二つのフェニル環(ベンジヒドリル基)が遊離塩基において相当の疎水性表面積を付与。 - 第三級アミン部位の塩形成により水溶性が大幅に向上し、固体/製剤状態の見かけの脂溶性は低減。 - 計算された物理化学的記述子:TPSA(トポロジカル極性表面積)=12.5、 水素結合供与体数=1、 水素結合受容体数=2、 可回転結合数=6。これらのパラメータは、比較的低い極性表面積と中程度の立体柔軟性を示し、遊離塩基は中枢系への浸透に適した脂溶性、塩形は実用的な水性製剤を可能にすることを示している。

構造識別子(SMILES、InChI)

  • SMILES: CN(C)CCOC(C1=CC=CC=C1)C2=CC=CC=C2.Cl
  • InChI: InChI=1S/C17H21NO.ClH/c1-18(2)13-14-19-17(15-9-5-3-6-10-15)16-11-7-4-8-12-16;/h3-12,17H,13-14H2,1-2H3;1H
  • InChIKey: PCHPORCSPXIHLZ-UHFFFAOYSA-N

これらの識別子は塩酸ジフェンヒドラミンの結合状態と一致し、電子的索引付けおよびケミインフォマティクス用途に適している。

識別子および同義語

登録番号およびコード

  • CAS(ヘッダーで提供):16-11-7
  • 原資料に存在する代替CAS番号(例):147-24-0(親化合物/関連物質)
  • EC番号(EINECS):205-687-2
  • UNII:TC2D6JAD40
  • ChEMBL ID:CHEMBL1620
  • DSSTox Substance ID:DTXSID4020537
  • KEGG:C07784; D00669
  • NSC番号:756729; 33299
  • RXCUI:1362

(上記の識別子は、入手可能な物質メタデータに含まれており、調達、規制上の相互参照および在庫管理に使用可能である。)

同義語およびブランド非依存名

報告されている一般的な同義語および系統名には以下が含まれます: - ジフェンヒドラミン塩酸塩 - ジフェンヒドラミンHCl - 2-ベンジドリルオキシ-N,N-ジメチルエタナミン・塩酸塩 - 2-(ジフェニルメトキシ)-N,N-ジメチルエタナミン塩酸塩 - N-(2-ジフェニルメトキシエチル)-N,N-ジメチルアミン塩酸塩 - Benadryl(サプライヤーや製品リストに表示されるブランド同義語) - Dimedrol塩酸塩

この原薬には、剤形や参照物質にわたって多数のブランド名および申請者供給の同義語が関連付けられています。

産業および医薬用途

原薬または中間体としての役割

ジフェンヒドラミン塩酸塩は抗ヒスタミン療法における原薬として広く使用されています。第一世代のH1拮抗薬として、アレルギー症状(蕁麻疹、掻痒)、乗り物酔い、悪心・嘔吐、不眠症(短期間の睡眠補助)、および一部の製剤では補助的な鎮咳剤として用いられます。さらに抗ムスカリン作用を有し、これが治療効果(例:制吐作用)および副作用プロファイル(鎮静、口渇、排尿遅延)に寄与しています。

製剤および開発における背景

この塩酸塩は、経口固形剤、経口液剤、局所用抗掻痒製品、および鎮痛剤や去痰剤との合剤などにおいて、水溶性や取り扱いの容易さから優先される形態です。製剤面の考慮事項として、光曝露の管理(徐々に暗色化するため)、劣化を抑制するための添加剤の適合性、および必要に応じて鎮静作用の副作用を緩和する投与形態の選択があります。この塩は即放性錠剤、カプセル、シロップ、軟膏・ローションなどに用いられ、一部の分析標準品や参照物質にも使用されます。

製品固有の詳細な用途概要が必要な場合は、通常この塩の溶解性、投与範囲および既知の薬力学プロファイルに基づいて選択されます。

規格および等級

典型的な等級タイプ(医薬品用、分析用、工業用)

この物質には以下の薬局方および市販等級指定が報告されています:BP、EP、JP、USP。

商業および工業で流通している典型的な等級は以下の通りです: - 原薬として医薬品に使用される医薬品用(薬局方)等級 - 試験分析、クロマトグラフィー、参照標準品用の分析/試薬等級 - 非臨床実験および製造に用いられる工業用等級

一般的な品質属性(定性的記述)

薬局方等級の物質は、同一性、試験値、残留溶媒および不純物制限を規定した証明書と共に供給されます。分析標準品は、溶液または固体形態の認証参照物質として提供されます。製造および出荷時に監視される典型的な品質属性には、官能試験外観(白色結晶性粉末)、HPLCまたは滴定による試験/含量、有機溶媒残留量、水分、重金属および必要に応じて微生物試験が含まれます。一部のサプライヤーは保存料無添加または特定溶媒調製の認証済み溶液を分析ワークフローに提供しています。

安全性および取り扱い概要

毒性プロファイルおよび暴露に関する留意点

  • 報告されている急性毒性:LD50 \(= 500\,\mathrm{mg}\,\mathrm{kg}^{-1}\)(経口、ラット)。
  • 毒性プロファイルには中枢神経系効果(鎮静、眠気、運動失調)、抗コリン作用(口渇、視力障害、排尿遅延、頻脈)、消化器症状が顕著であり、過量摂取時には重度の抗コリン症候群、痙攣および心肺機能障害を伴うことがあります。
  • 生殖および発生への配慮:授乳への影響の可能性および母体における大量または長期投与に伴う授乳児への副作用の可能性が示唆されており、一部の動物実験条件下では生殖毒性の信号も報告されています。
  • 慢性・標的臓器影響:動物実験では高用量投与における腫瘍発生の証拠は不確定であり、現時点で人間の発癌性分類は示されていません。
  • 燃焼・分解時の危険性:熱分解時に窒素酸化物および塩化水素を発生し得ます。火災時は適切な消火剤および呼吸保護具を用いて対処してください。

誤飲、粉塵の吸入、長時間の皮膚接触を避けてください。過量摂取が疑われる場合は、支持療法および症状に応じた医療処置が必要です。特定の普遍的な解毒剤はありませんが、重篤な抗コリン毒性には状況に応じてフィソスチグミンが臨床的に使用され、興奮や痙攣にはベンゾジアゼピン系薬剤による支持療法が行われています。

保管および取扱いガイドライン

  • 分解および暗色化を最小限に抑えるため、光を避けて常温で密閉容器に保管してください。
  • 粉末や固体は飛散を最小限に抑えて取り扱ってください。純物質の称量および希釈作業では適切な換気設備(局所排気)および個人防護具(手袋、保護眼鏡、実験用コート)を使用してください。高純度取扱工程では、粉塵または蒸気曝露の可能性がある場合に有機蒸気・酸性ガス用カートリッジと粒子フィルターを備えた半面マスクなどの呼吸保護具の使用が推奨されます。
  • 小規模な流出事故時は、こぼれた固体を水で湿らせて適切な容器に回収し、残留物は石鹸水で洗浄し、廃棄物は地域の規制に従って処理してください。
  • 消火活動には、乾燥化学薬品、二酸化炭素、ハロンタイプ消火器を有機固体燃焼物対応の一般指針に従って使用してください。燃焼ガスの吸入を避け、必要に応じて適切な自給式呼吸器を装着してください。
  • 詳細な危険性、輸送および規制情報については、製品固有の安全データシート(SDS)および現地法令を参照してください。