ヘキサフルオロスルホン酸(355-46-4)の物理的および化学的性質
ヘキサフルオロスルホン酸
PFAS関連の研究開発、材料開発および製剤試験における分析用標準物質および中間体として一般的に使用されるペルフルオロスルホン酸です。
| CAS番号 | 355-46-4 |
| ファミリー | ペルフルオロアルキルスルホン酸類(PFAS) |
| 一般的形状 | 粉末または結晶性固体 |
| 一般グレード | EP、Technical Grade、USP |
ヘキサフルオロスルホン酸は、6炭素の骨格に完全にフッ素化された炭素置換基および末端にスルホン酸基を有するペルフルオロアルカンスルホン酸(ペルフルオロスルホン酸)です。構造的には分子式 \(\ce{C6HF13O3S}\) で表され、系統命名は「1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-トリデカフルオロヘキサン-1-スルホン酸」です。ペルフルオロアルキル鎖は炭化水素骨格の極めて低い分極性を与えつつ、12〜13個のフッ素原子から強い電子求引性を示します。スルホン酸基頭部は強酸性で高い極性を有し、凝縮相における酸塩基およびイオン化挙動を支配します。
本化合物は容易にイオン化し(推定\(\mathrm{p}K_a \approx 0.14\))、典型的な環境および生理的pH条件下で対応するヘキサフルオロスルホナート陰イオンを生成します。したがって、中性および塩基性媒体では主に陰イオンとして存在し、持続性が高く高い移動性を示す界面活性剤様物質として振る舞います。疎水性のフッ素化された尾部と電荷を帯びた高水和性のスルホン酸基頭部の組み合わせにより、両親媒性相挙動(表面活性、濃縮系でのミセル形成)を示し、界面や有機コーティングへの分配傾向を持ちながら、低揮発性および加水分解・光分解耐性を示します。ヒトおよび野生生物における持続的な生物蓄積傾向と長い生物学的消失半減期は、本C6系ペルフルオロアルキルスルホン酸クラスの特徴です。
本物質で報告されている一般的な市販グレードはEP、Technical Grade、USPです。
基本的な物理的性質
密度
測定密度:\(1.841\ \mathrm{g}\,\mathrm{cm}^{-3}\)。
解説:典型的な有機液体と比較して高密度であることは、多量のフッ素含有量および緻密なペルフルオロアルキル構造を反映しています。高密度のフッ素化液体および固体は、しばしば低圧縮性と高い化学的惰性を示します。
融点
本データでは実験的に確立された融点の値はありません。
沸点
報告されている沸点:\(238\text{–}239\,^\circ\mathrm{C}\)。
解説:比較的高い沸点範囲は、小型で重量のある分子が強く相互作用し、非解離状態のスルホン酸基による水素結合が可能で、常温で低い蒸気圧を示すことと整合的です。
蒸気圧
25℃での推定蒸気圧:\(0.0046\ \mathrm{mmHg}\)。
解説:低い蒸気圧は常温条件下での揮発性の制限を示します。にもかかわらず、大気中ではエアロゾルとの付着および界面活性剤様性質のために気相・粒子相の両方で大気分配が観察されています。
引火点
本データでは実験的に確立された引火点の値はありません。
化学的性質
溶解性および相挙動
ヘキサフルオロスルホン酸は強酸性の界面活性剤として振る舞います:環境および生理的pHではほぼ完全にイオン化(推定\(\mathrm{p}K_a \approx 0.14\))し、水溶液中は主にヘキサフルオロスルホナート陰イオンが支配的です。両親媒性の性質により、表面活性および高濃度でのミセル様集合体を形成します。有機マトリックスや界面に結合した一部は、低い親物質の蒸気圧にもかかわらず実質的に非揮発性となり得ます。水および土壌中では陰イオン形態は高い移動性(報告された現地ベースの\(K_{\mathrm{oc}}\approx 9.3\))、有機炭素への低吸着性、および中程度の生物濃縮の可能性(報告BCF 約10;現地BAF 約70)を示します。
溶解性についての注記:明示的な水溶解度の値は利用可能なデータに含まれていません。本物質のイオン化形態は水に分散可能ですが、中性塩基性環境に対して強酸性環境下の中性酸形態はより疎水的です。
反応性および安定性
化学的安定性:推奨保管条件下で安定と報告されています。スルホン酸ヘッドグループは熱的に安定であり、ペルフルオロアルキル鎖は通常の環境条件下で加水分解、酸化、光分解に対して非常に耐性があります。加水分解は重大な分解経路とは考えられていません。OHラジカルによる無生物的大気酸化は遅く(推定大気中半減期:約115日)、強酸化剤とは非適合です。熱分解や燃焼により有毒ガス(例:フッ化水素、硫黄酸化物)が発生する可能性があるため、適切な消火対策が必要です。
熱力学データ
標準エンタルピーおよび熱容量
本データ中では実験的に確立された値はありません。
解説:標準熱力学量(生成標準エンタルピー、定圧比熱容量)は利用可能な実験データセットに含まれていません。信頼できる値は、熱量測定や高度にフッ素化されたスルホン酸の計算化学的検証に基づく算定が必要です。
分子パラメータ
分子量および分子式
分子式:\(\ce{C6HF13O3S}\)。
報告されている分子量:\(400.12\)。
正確質量(単一同位体質量):\(399.9438812\)。
解説:分子量および正確質量は多くのフッ素置換を反映しています。質量分析による脱プロトン化陰イオンやオリゴマー種のモニタリングに有用です。
LogPおよび極性
報告されている計算値XLogP3(脂溶性指標):\(3.7\)。
トポロジカル極性表面積(TPSA):\(62.8\ \text{Å}^2\)。
水素結合供与体数:1(非解離状態のスルホン酸プロトン)。
水素結合受容体数:16。
回転可能結合数:5。
解説:計算されたXLogPが3.7であることはペルフルオロアルキル骨格の本質的な疎水性を示しますが、強酸性スルホン酸基により中性pHでは水溶性および陰イオン性が促進され、生物学的系における古典的脂溶性分配を低減し、脂質相よりむしろタンパク質(例:血清アルブミン)への結合を促進します。
構造的特徴
本分子は完全フッ素化されたヘキシル(ペルフルオロヘキシル)尾部と末端のスルホン酸基を組み合わせています。ペルフルオロアルキル部分は電子的かつ立体的に炭化水素鎖とは異なり、化学的惰性、高密度および強いC–F結合強度を付与します。スルホン酸ヘッドグループは強酸でありほとんどの条件下で陰イオン形態(\(\ce{RSO3^-}\))をとり、水分子やタンパク質結合サイトと強く錯形成します。分子幾何は尾部の分極性を最小化しスルホナート部位に極性を集中させることで、界面活性剤様特性および界面分配性を生じさせています。
SMILES: C(C(C(C(F)(F)S(=O)(=O)O)(F)F)(F)F)(C(C(F)(F)F)(F)F)(F)F
InChI: InChI=1S/C6HF13O3S/c7-1(8,3(11,12)5(15,16)17)2(9,10)4(13,14)6(18,19)23(20,21)22/h(H,20,21,22)
InChIKey: QZHDEAJFRJCDMF-UHFFFAOYSA-N
(これらの識別子は構造およびスペクトル確認のための機械識別子として提供されており、質量分析およびクロマトグラフィー法の開発における分析ワークフローでの使用を想定しています。)
識別子および別名
登録番号およびコード
CAS番号:355-46-4
その他報告されている識別子(一部):UNII ZU6Y1E592S;EC番号 206-587-1;複数のキュレーション済み登録IDが本物質に関連付けられています。
別名および構造的名称
一般的な別名および報告されている別称には、ペルフルオロヘキサンスルホン酸、PFHxS、ペルフルオロヘキサン-1-スルホン酸、ペルフルオロヘキサンスルホン酸、ペルフルオロヘキサン-1-スルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6‑トリデカフルオロヘキサン-1-スルホン酸、トリデカフルオロヘキサン-1-スルホン酸があります。分析文脈では、「Perfluorohexanesulfonic Acid (Technical Grade)」のような技術的および分析用表記や、メタノールまたはアセトニトリル中の標準溶液等の濃度フォーマットが使用されます。
産業および商業用途
代表的な用途および産業分野
ペルフルオロヘキサンスルホン酸は歴史的に使用されてきたほか、ペルフルオロアルキルスルホネート製品の製造における前駆体として使用されています。報告されている代表的な用途には、消防用の水性膜形成泡消火剤(AFFF)配合剤、繊維やカーペットの防染・撥水処理、皮革および衣料用膜のコーティング、特殊フッ素化合物の化学中間体としての使用が含まれます。環境モニタリングデータは、これらの用途からの排出経路として廃水、土壌、および大気環境への歴史的放出が示されています。
合成または製剤における役割
フッ素化学製造において、ペルフルオロアルカンスルホニルフルオリドは電気化学的フッ素化またはその他のフッ素化手法により製造され、加水分解してスルホン酸を生成するか、製剤で使用される塩に変換されます。スルホン酸(およびその塩)は製品製剤中でイオン性界面活性剤および界面活性剤として機能し、塩(例:カリウム塩またはアンモニウム塩のペルフルオロヘキサンスルホン酸塩)は下流用途向けに一般的に取り扱われます。
調達または製剤の意思決定において簡潔な製品固有の用途概要が必要な場合、本物質に対する単一の普遍的な用途説明はここには存在しません。実際には製品マトリックスとの適合性および以下に記載する規制上の考慮事項により選択されます。
安全性および取り扱い概要
急性および職業性毒性
危険分類および急性影響:報告されている危険有害性表現には、経口摂取、皮膚接触、吸入による急性毒性;皮膚腐食性/刺激性および重篤な眼損傷/刺激性;反復曝露による標的臓器毒性が含まれます。報告されているGHS危険有害性表現にはH302、H312、H314、H332(急性曝露経路)およびH373(反復曝露による臓器障害の可能性)があります。
毒物動態および慢性曝露:ヒトのバイオモニタリングおよび疫学研究は、多くの集団において広範囲に曝露が見られ、生物学的排出半減期が非常に長いことを示しています(ヒトの幾何平均血清排出半減期は一部の解析で数千日に及ぶと推定されています)。血清濃度の上昇と脂質パラメータの変動、感受性のある被験者における甲状腺ホルモンの変調、発達成果、および選択されたコホートでの神経発達や生殖関連エンドポイントとの関連が報告されています。動物実験では肝臓影響、リポタンパク質代謝への影響、発達性神経毒性マーカー、甲状腺ホルモン依存経路の変調が確認されています。報告された慢性経口参照用量の推定値(毒性サマリーに記載)には、\(4\times10^{-10}\ \mathrm{mg}\,\mathrm{kg}^{-1}\,\mathrm{day}^{-1}\)のような極めて低い値(中央推定値の一例)や、他の評価で示される約\(2\times10^{-5}\ \mathrm{mg}\,\mathrm{kg}^{-1}\,\mathrm{day}^{-1}\)の慢性指針値が含まれます。これらはリスク評価で用いられる低曝露閾値を示唆しており、使用者は製品固有の安全関連文書で運用限界を必ず確認してください。
緊急時対応:摂取、吸入または皮膚・眼の暴露に対しては、標準的な除染および医療的支持措置を実施します。汚染された衣服の除去、影響部位の水洗浄、気道確保と呼吸の維持、迅速な医療機関受診が推奨されます。
保管および取り扱い上の注意
取扱い:粉塵やエアロゾルの吸入、皮膚および眼への接触を避けてください。粉塵やエアロゾルが発生する可能性がある場合は、局所排気装置やドラフトチャンバーなどの工学的管理措置を使用してください。化学薬品耐性手袋および予想される曝露レベルに適合した不浸透性衣類を点検・選定してください。
個人用保護具(PPE):眼の保護具(サイドシールド付き安全メガネまたはゴーグル)、化学薬品耐性手袋、微粒子暴露に対する呼吸用保護具(例:P95/P1フィルター)、混合ガス/微粒子リスクの場合は適切な複合カートリッジの使用が推奨されます。選択は所属機関の呼吸用保護プログラムおよび試験基準に従って実施してください。
保管:容器は密閉し、乾燥した換気良好な場所で保管してください。強力な酸化剤と同時に保管しないでください。容器にはラベルを貼付し、在庫管理を行い、管理されていない漏出を最小限に抑えてください。
事故時の漏出および廃棄:粉塵の発生を避け、漏出を封じ込め、適切な容器に回収し、環境持続性と水・土壌中での移動性に注意しながら、許可を受けた有害廃棄物処理サービスで処分してください。廃棄物管理においては、化合物の環境持続性および輸送可能性を考慮し、地域の法規制に従ってください。
詳細な危険性、輸送および規制情報については、製品固有の安全データシート(SDS)および地域の法令をご参照ください。