ピクロトキシン(124-87-8)物理化学的性質
ピクロトキシン
神経薬理学およびGABA-A受容体研究における主に研究試薬および参照標準として使用される、植物由来のセスキテルペン・ジラクトン混合物。
| CAS番号 | 124-87-8 |
| ファミリー | セスキテルペン・ジラクトン類 |
| 典型的な形態 | 微結晶性粉末または柱状結晶 |
| 一般的なグレード | BP、EP、USP |
ピクロトキシンは、約1:1の比率で結合した二つのジラクトン成分(ピクロトキシニンおよびピクロチン)から成る、天然由来のセスキテルペン由来分子複合体である。構造的には、強く酸素化された二環性ジラクトン骨格からなる非窒素性中性分子化合物として記述され、複合分子式はC15H18O7·C15H16O6(しばしば1:1複合体を示すためにC30H34O13と表記される)と報告されている。本化合物は複数の立体中心といくつかの縮合エーテルおよびラクチン環を持ち、限られた立体配座柔軟性を持つコンパクトで剛直な多環架構を形成する(共有結合単位数=2、回転可能結合数=2)。
電子的には、ピクロトキシンはテルペン類としては非常に極性が高く、多数のカルボニルおよびエーテル酸素原子を含み、水素結合受容体能が高く、水素結合供与体はやや少数である。計算されるトポロジカル極性表面積(TPSA)は191 \(\text{Å}^2\)、水素結合受容体数は13、供与体数は3であり、テルペン天然物としては低い膜分配性と比較的高い水親和性を示す。報告されたオクタノール-水分配係数(logP)は \(-2.229\)で、中性条件下での全体的な親水性を示す。ピクロトキシンは標準水溶媒中で中性、非塩基性および非酸性の分子であり(飽和水溶液はリトマス試験で中性と報告されている)、生理的pH範囲内でイオン化しない小分子である。
機能的には、ピクロトキシンは強力な中枢神経系(CNS)活性の痙攣性物質であり、GABA\(_A\)受容体作動型塩化物チャネルの非競合的拮抗薬として作用する。歴史的には研究用ツールとして用いられ、呼吸刺激剤およびバルビツール酸塩中毒の解毒剤として限られたが廃止された医療利用例がある。一般に流通するグレードとしてはBP、EP、USPが報告されている。
基礎的物理化学的性質
密度および固体状態形態
純粋な物質は無色で光沢のある柱状結晶、または白色からほぼ白色の微結晶性粉末として記述され、時に光沢のある斜方葉状結晶としても見られる。固体状態は1:1の分子複合体(ピクロトキシニンおよびピクロチン)で構成されており、共有結合単位数が2であることは単一の小分子モノマーではなく分子複合体であることを示す。現行データでは絶対的な固体密度値は提供されていない。
融点
報告されている実験的融点は以下の通りである:397 \(^\circ\)F(EPA, 1998)、203.5 \(^\circ\)C、および203 \(^\circ\)C。単一の合意された融点の不確かさはこれらのデータの範囲外で提供されていない。
溶解性および溶解挙動
報告されている実験的溶解性観察例: - 「水350 mlに1 g溶解」 - 「沸騰水5 mlに約1 g溶解」 - 「95%エタノール13.5 mlに1 g溶解」 - 「沸騰アルコール3 mlに約1 g溶解」 生データには単位不明の数値「4100」も含まれる。実務的解釈として、冷水中では中程度の溶解性、熱水および熱アルコールでは著しく溶解性が向上し、高濃度エタノール中でも溶解性がある。飽和水溶液はリトマス試験に対して中性であり、非イオン化中性化合物と整合する。
化学的性質
酸塩基挙動およびpKaの定性
ピクロトキシンは非窒素性の中性化合物であり、飽和水溶液はリトマス試験で中性である。現行データではピクロトキシンの実験的な\(\mathrm{p}K_a\)値は利用できない。
反応性および安定性
ピクロトキシンは空気中で安定とされるが光により影響を受けるため、保存時の遮光が推奨される。強力な酸化剤または還元剤と反応する可能性がある。熱分解時には刺激性煙霧を発生する。化学的にはピクロトキシニンおよびピクロチンの二つのジラクトン構造からなるペアとみなせる。両者は活性が異なり、ピクロトキシニンが主な活性痙攣性成分でピクロチンはほぼ不活性である。複数のラクチンおよびエーテル官能基が存在するため、強酸・強塩基条件下で加水分解による切断を受けやすく、敏感なカルボニル中心で求核的および還元的分解が生じる可能性があるが、現データには定量的な加水分解速度や反応動態データは含まれていない。
分子パラメータ
分子量および分子式
- 複合分子式(報告値):C15H18O7·C15H16O6
- 別表記:C30H34O13
- 計算分子量:602.6(報告値)
複合正確質量/単一同位体質量は602.19994113と与えられている。
LogPおよび構造的特徴
- 報告logP値:\(-2.229\)
負のlogPはオクタノール分配が低いことを示し、高い極性表面積と高水素結合能(受容体13、供与体3、TPSA=191 \(\text{Å}^2\))を支持する。構造的には複数の縮合ラクチン環とエーテル架橋を含み、剛直な3次元スキャフォールドを形成し、回転可能な結合数は2で限定的、多数の明確な立体中心(11箇所)がある。これらの特徴は立体配座の柔軟性を減少させ、GABA受容体塩化物チャネルでの結合相互作用に影響を与える。
構造識別子(SMILES、InChI)
- SMILES: CC(=C)[C@@H]1C2[C@@H]3[C@@]4(C@(CC5[C@]4(O5)C(=O)O3)O)C.C[C@@]12[C@H]3C4C@HC(C)(C)O
- InChI: InChI=1S/C15H18O7.C15H16O6/c1-12(2,18)6-7-10(16)20-8(6)9-13(3)14(7,19)4-5-15(13,22-5)11(17)21-9;1-5(2)7-8-11(16)19-9(7)10-13(3)14(8,18)4-6-15(13,21-6)12(17)20-10/h5-9,18-19H,4H2,1-3H3;6-10,18H,1,4H2,2-3H3/t5-,6+,7?,8?,9-,13-,14-,15+;6?,7-,8?,9?,10+,13+,14+,15-/m10/s1
- InChIKey: VJKUPQSHOVKBCO-ZTYBEOBUSA-N
上記の構造識別子はすべて提供されたまま記載しており、ピクロトキシン試料に特徴的な二成分の共有結合複合体を反映している。
識別子および同義語
登録番号およびコード
- CAS番号:124-87-8
- 欧州共同体番号(EC番号):204-716-6
- 国連番号(輸送概要に記載あり):3462(COCCULUS)
- DrugBank ID(報告):DB00466
- InChIKey:VJKUPQSHOVKBCO-ZTYBEOBUSA-N
これらの識別子は相互参照および試料トラッキングのために報告されている。
同義語およびブランド非依存名
報告されている同義語および一般名: - ピクロトキシン - コクーリン - コックルス - ピクロトキシニン–ピクロチン(1:1) - ピクロトキシニン - ピクロチン - ピクロトキシン(英語ではPicrotoxineとも) - ピクロトックス
(上記リストは、供給業者および規制注記に一般的に使用される名称を反映しています。)
工業および医薬品への応用
原薬または中間体としての役割
ピクロトキシンは主に、生物学的に活性な痙攣誘発物質であり、GABA\(_A\)受容体塩化物チャネルに対する非競合的拮抗薬として機能します。実務での主な役割は、神経科学研究における薬理学的ツール(抑制性塩化物導電性およびGABA作動性シグナル伝達の解析)としてと、歴史的に中枢神経刺激剤およびバルビツレート中毒の解毒剤としての医薬品用途です。高い毒性と狭い治療域のため臨床使用は減少しており、広く有用な治療薬とはみなされていません。
製剤および開発の文脈
製剤の文脈では、ピクロトキシンは純粋な結晶性物質または抽出された天然物混合物(種子/ベリー抽出物)として扱われています。その効力と毒性のため、研究用または獣医用の製剤では正確な投与および封じ込めが重視されており、特定の添加剤適合性、投与形態、および検証された製剤パラメータは現時点のデータには含まれていません。工業的製造仕様は簡潔には提供されておらず、本化合物はAnamirta paniculata(Cocculus indicus / フィッシュベリー)種子または関連する天然由来資源からの抽出によって得られることが記載されています。
規格および等級
代表的な等級種別(医薬品用、分析用、技術用)
ピクロトキシンの一般的な市販等級には、BP、EP、USPが含まれます。これらの等級表示は、一部の供給連鎖で分析および薬局方品質規格が参照されていることを示します。本物質クラスにおいて実務上用いられる典型的な等級カテゴリは、医薬品用(薬局方準拠)、分析用/試薬用、および技術用/研究用材料です。
一般的な品質特性(定性的説明)
調達および品質管理に関連する主な品質特性は以下の通りです: - 同定および純度(ピクロトキシニン:ピクロチン比の確認およびその他の種子由来アルカロイドの不在) - 物理形態(結晶性リーフレットまたは微結晶粉末)および取り扱いのためのバルク密度/粒径 - 光および熱に対する安定性(製品は光感受性をもち、高温加熱で分解する) - 抽出工程由来の残留溶媒含有量 特定の含量規定、混入物閾値、分析証明書の値は現時点のデータには含まれておらず、調達または規制使用の際は供給業者の文書から取得する必要があります。
安全性および取扱い概要
毒性プロフィールおよび曝露に関する考慮事項
ピクロトキシンは強い毒性を有します。報告されている急性影響には中枢神経刺激と重篤な痙攣の可能性が含まれます;\(20\,\mathrm{mg}\)の投与で重度中毒症状が現れることがあり、ヒトの致死量はある文献で約\(1.5\,\mathrm{mg}\,\mathrm{kg}^{-1}\)と報告されています。急性曝露時の臨床症状には頭痛、唾液分泌過多、発汗、瞳孔散大、視覚障害、筋硬直、過活動、譫妄、幻覚、悪心、嘔吐、呼吸障害、肺水腫、痙攣および昏睡が含まれます。痙攣誘発作用のため、代替の支持療法が利用可能な場合はピクロトキシンの使用は禁忌であり、刺激療法が危険となる状況では投与すべきではありません。また、水生生物(特に魚類)に対しても非常に高い毒性を持ちます。
職業的管理および個人防護措置は高い急性毒性を前提とし、経口摂取、吸入、皮膚接触を避けるべきです;適切な工学的管理措置(局所排気、封じ込め)を使用し、手袋、眼・顔面保護を含む適切な個人防護具を装着し、緊急対応時には呼吸保護具(送気式または陽圧呼吸装置)および曝露状況に応じて全身被覆型防護服の着用が推奨されます。
保管および取扱い指針
- 劣化を防止するため、光から遮蔽し密閉容器にて保管すること。
- アクセスを制限し、秤量、移送、および廃棄手順を厳密に管理して偶発的曝露や環境流出を防止すること。
- 漏出時は隔離し、適宜作業者の退避を行い、吸収材および適切な個人防護具を用いて除染を実施すること;汚染物質は適用される有害廃棄物規制に従い回収・処分すること。
- 加熱または分解時には刺激性の煙霧を発生するため、分解生成物への曝露を避けること。 詳細な危険性、輸送および規制情報については製品固有の安全データシート(SDS)および現地法規をご参照ください。