プロピン (74-99-7) 物理的および化学的特性
プロピン
小型の末端アルキンで、液化圧縮ガスとして供給され、特殊燃料および化学原料として商業的に使用される。
| CAS番号 | 74-99-7 |
| 化学族 | アルキン類(末端アセチレン類) |
| 標準形態 | 液化圧縮ガス |
| 一般的なグレード | BP, EP, USP |
プロピンは末端アルキン類に分類される単純な脂肪族不飽和炭化水素(分子式 C3H4)である。構造的にはメチル置換アセチレン(SMILES: CC#C、IUPAC命名法: prop-1-yne)である。カルボン同士の三重結合は、末端のアセチレン炭素原子において主にsp混成を示し、メチル基を持つ炭素は立体的環境としてsp2に近い性質を有し、直線形状を形成する。分子全体としては非極性(トポロジカル極性表面積 = 0)で、水素結合の供与者も受容者も存在しないため、分子間相互作用は主に分散力とC≡C結合に伴う弱い双極子相互作用によって支配される。
軽く揮発性の末端アルキンであるプロピンは、可燃性の低沸点ガスとして振る舞い、圧力下で液化可能である。末端アセチレン水素は脂肪族C–H結合に比べて比較的酸性が強く、これは反応性金属塩存在下での金属−アセチリド形成に関連する。プロピンは強い酸化剤に対して還元性を示し、特定の金属と不安定なアセチリドを形成することがあり、圧縮または加熱条件下で特定の条件下では分解または爆発する可能性がある。適度な親油性(log Kow ≈ 0.94; 計算XLogP ≈ 0.9)と低い水溶性のため、水や土壌中に放出されると速やかに揮散し、生物蓄積傾向は低い。
この物質の代表的な商業グレードには BP, EP, USP が報告されている。
基本的な物理特性
密度
液体および気体の密度値は状態や参照条件により異なる。実験報告からの例: - 密度:0.607 (\(25\,^\circ\mathrm{C}/4\,^\circ\mathrm{C}\)) - 相対密度(水=1):0.70 - 相対蒸気密度(空気=1):1.41
これらの値は、蒸気相ではプロピンが空気より重く、凝縮(液体)状態では水に対して比重が1未満であることを示している。
融点
- 報告値:\(-102.7\,^\circ\mathrm{C}\)、 \(-153\,^\circ\mathrm{F}\)。
単一の確定的な実験融点値が必要な場合、現時点でこれらの報告値以上の統合された値は確立されていない。
沸点
- 報告値:\(-23.2\,^\circ\mathrm{C}\)、\(-10\,^\circ\mathrm{F}\) (760 mmHgにおいて)。
プロピンの低い沸点は、貯蔵および輸送時に液化圧縮ガスとして取り扱われることと一致している。
蒸気圧
- 報告された蒸気圧: \(5.2\,\mathrm{atm}\)。
- 同等の実験表示: \(4.31 \times 10^{3}\,\mathrm{mmHg}\) (25 °C)、または蒸気圧として \(521\,\mathrm{kPa}\) (20 °C)報告。
室温での非常に高い蒸気圧は、液体の形態を保持するための加圧容器の必要性と、放出後の気相への迅速な移行を説明している。
引火点
- 可燃性ガスに分類されるため、ガスの引火点は適用なし。
プロピンはその可燃限界内で空気と容易に可燃性かつ潜在的に爆発性の混合気体を形成する(安全性の節を参照)。
化学的特性
溶解性および相挙動
実験的な溶解度報告は、揮発性かつ低極性ガスとして一貫している: - 水への溶解度は \(3,640\,\mathrm{mg/L}\) (25 °C)(質量/100 mLとして 0.36 とも報告)。 - 一部定性的記述で「不溶性」とされることもあるが、「アルコールに非常に溶けやすい、クロロホルムおよびベンゼンに可溶」とも説明されている。
定性的な「不溶性」と数値的溶解度の見かけの矛盾は、気相挙動および従来の液体に比べて限定的な熱力学的溶解度を反映している。プロピンは蒸気相への分配が強く、水性媒体から速やかに揮発する(報告データより推定したヘンリー定数 ≈ \(1.1 \times 10^{-2}\,\mathrm{atm\,m^3\,mol^{-1}}\)、水中残留時間が短い)。
相挙動:常温常圧では気体で存在し、圧力下で液化圧縮ガスとして貯蔵される。放出された場合、蒸気は空気より密度が高く、低い場所に集まる可能性がある。
反応性および安定性
プロピンは強い酸化剤に対して化学的に反応性が高く(発熱反応)、特定の金属/塩(例:銀、銅)と敏感な金属−アセチリド化合物を形成することがある。これら金属アセチリドは衝撃感受性がある。報告された危険な挙動として: - 高圧下での爆発性分解または爆発(特定条件下で約4.5~5.6気圧で爆発的に分解する可能性)。 - 酸化剤との発熱反応、一部金属合金(銅含有量高い合金)および特定の高分子との不適合性。 - 加熱分解時に刺激性かつ有害な燃焼生成物(例:一酸化炭素)を放出。
アセチレン基の機能性により、選択的水素化、三重結合への付加反応、金属触媒を用いたカップリング反応などが制御条件下で化学的に可能であるが、酸化剤や反応性金属塩との非管理接触は避けるべきである。
熱力学データ
標準反応熱および熱容量
報告されている熱化学特性: - 生成熱:\(185.6\,\mathrm{kJ\,mol^{-1}}\)。 - 燃焼熱:\(-1.8496 \times 10^{9}\,\mathrm{J\,kmol^{-1}}\)。 - 熱容量(報告値):\(67.6\,\mathrm{J\,mol^{-1}\,K^{-1}}\) (25 °C)。
これらは非常に吸熱的な生成および完全燃焼時の大きな発熱と一致し、軽質炭化水素燃料に典型的な熱力学挙動を示す。
その他の輸送特性および熱特性: - 電離ポテンシャル:\(10.36\,\mathrm{eV}\)。 - 熱伝導率(気体、1 atm、298 K):\(0.018\,\mathrm{W\,m^{-1}\,K^{-1}}\);液体(233 K):\(0.16\,\mathrm{W\,m^{-1}\,K^{-1}}\)。 - 粘度:気体(298 K):\(8.4 \times 10^{-3}\,\mathrm{mPa\,s}\);液体(233 K):\(0.26\,\mathrm{mPa\,s}\)。
分子パラメータ
分子量および分子式
- 分子式:C3H4
- 分子量:\(40.06\)(名目値、単位は慣例により \(\mathrm{g\,mol^{-1}}\))
計算された正確な単一同位体質量:\(40.0313001276\)。
LogPおよび極性
- 報告されたlog Kow:\(0.94\)。
- 計算されたXLogP:\(0.9\)。
- トポロジカル極性表面積(TPSA):0。
これらは、大型炭化水素に対して低い極性および低〜中程度の親油性を示す指標である。
構造的特徴
- SMILES:CC#C
- InChI: InChI=1S/C3H4/c1-3-2/h1H,2H3
- InChIKey: MWWATHDPGQKSAR-UHFFFAOYSA-N
プロピンは、メチル置換基が一方のアセチレン炭素に結合した末端アルキン(プロペン-1-イン)で、末端のアセチレン性C–Hを有します。三重結合はアセチレン炭素原子周辺の直線性を与え、特徴的な分光学的シグネチャー(赤外線スペクトルのC≡C伸縮振動、アセチレン炭素に一致した13C NMRシフト)に寄与します。末端のC–Hは典型的なsp3 C–H結合に比べて酸性度が高く、金属アセチリド化学反応に関与します。
識別子および異名
登録番号およびコード
- CAS番号:74-99-7
- EC番号:200-828-4
- 輸送文脈で使用されるUN番号:3161(1-PROPYNE)および1954
- UN危険等級:2.1(可燃性ガス)
- UNII:086L40ET1B
その他の登録識別子やデータベース固有のIDは、各種機関の登録リポジトリに記録されています。
異名および構造名
命名リストでよく見られる一般的な異名には以下が含まれます: - プロピン - メチルアセチレン - プロペン-1-イン - 1-プロピン - メチルアセチレン - プロピニリデン - アリレン
これらの異名は同一のC3H4結合性を指す慣用名、系統名および歴史的命名法を反映しています。
工業的および商業的用途
代表的用途および産業分野
プロピンは特殊燃料および燃料ガス混合物(例:特定の溶接・トーチ用燃料ブレンド)の成分として使用されます。また、石油化学プロセスの化学中間体や、アセチレン性ビルディングブロックが必要な小規模有機合成に用いられます。主な職業暴露の可能性がある産業分野としては、石油化学製造、溶接・切断作業、化学中間体生産などが挙げられます。
合成または配合における役割
末端アルキンとして、プロピンはアルキニル化および水素化化学における反応性C3ビルディングブロックとして機能します。クラッキングガス流から回収可能であり、精製および化学製造の文脈で溶媒抽出や選択的水素化戦略によりC3混合物から分離されます。製剤製品における主な実用的役割は、エネルギー密度および燃焼特性が有利な燃料成分としてです。
製品仕様レベルでの簡潔な用途概要が必要な場合、本物質は揮発性、エネルギー密度、上述の反応性に基づき、燃料用途もしくはアセチレン中間体として通常選択されます。
安全性および取り扱い概要
急性および職業性毒性
高濃度ではプロピンは窒息性ガスであり、呼吸器刺激物です。急性吸入暴露により中枢神経抑制作用(めまい、頭痛、吐き気、意識喪失)が報告されています。報告されている職業暴露限界および毒性閾値は以下の通りです: - 許容/推奨8時間TWA曝露量:\(1000\ \mathrm{ppm}\)(報告値) - 生命または健康に直ちに危険なレベル(IDLH)基準(安全策として爆発下限の割合に基づく):\(1700\ \mathrm{ppm}\) - 空気中の可燃性(爆発)下限・上限:下限約1.7%(体積比)、上限約11.7%(体積比)
動物の吸入試験では非常に高濃度曝露により麻酔作用および肺刺激が生じることが示されており、十分高濃度では一過性の中枢神経抑制および肺病理学的影響が認められます。液化ガスとの接触は冷凍やけど(凍傷)を引き起こす恐れがあります。
応急処置:吸入時は新鮮な空気の場所に移動し、必要に応じて呼吸補助を行ってください。液体による凍傷の場合は影響部位を優しく洗い流し、医療機関を受診してください。
保管および取り扱い上の注意
- 保管:シリンダーおよび容器は冷涼で換気の良い、防火設備のある場所に保管し、着火源から離してください。容器は直立した状態で保管し、機械的損傷を防ぐために固定してください。容器は密閉し、熱から保護し圧力の蓄積を防止してください。
- 取り扱い:閉鎖系を使用し、液体移送時には爆発防止型電気機器および接地・ボンディングを行い静電気の危険を最小限にしてください。強力な酸化剤、特定の銅含有合金、感度の高いアセチリド形成可能な反応性金属塩との接触を避けてください。
- 火災および漏出時対応:プロピンは空気と可燃性混合物を形成し、蒸気は空気より重いため着火源まで流れて引火する恐れがあります。大量漏出時は風下へ避難し、着火源を除去してください。加圧容器を含む火災では曝露容器を水噴霧で冷却しつつ安全距離を保持してください。
- 個人用保護具:職業暴露限界に近づく可能性のある濃度では適切な呼吸保護具を使用してください。液化ガス取り扱い時には凍傷防止のため耐低温性手袋および顔面・眼保護具を装着し、蒸気の滞留が予想される場所には局所排気装置を設置してください。
詳細な規制、輸送分類、緊急対応の指針については、製品固有の安全データシート(SDS)および適用される地元の法令をご参照ください。
保管および取り扱い上の注意
(アウトライン上重複した見出しを保持)
圧縮ガスに関する配慮および取り扱い注意点として、プロピンは通常液化圧縮ガスとして輸送・保管されます。具体的推奨事項は以下の通りです: - 液化物取り扱い時は全ての移送設備に接地およびボンディングを行い静電気の蓄積を防止すること。 - 蒸気が滞留する可能性のある場所では着火源を排除すること。 - 配管や容器の材質として不適合材料(特に特定の銅合金および反応性金属塩)を使用しないこと。 - 緊急換気、ガス検知、適切な消火対策を講じること。液化ガスの漏出に対しては吹きさらしの水噴射は避けてください。
シリンダーの取扱い、移送速度、緊急隔離距離に関する正確な手順は、設備の緊急対応計画および製品SDSをご参照ください。